2008年05月のアーカイブ

ADDIS Project 2008

昨年に引き続き、エチオピアの首都、アディスアベバでアーバンリサーチをしてきました。
その一部をご紹介したいと思います。(昨年からのエチオピアプロジェクトのエントリーはこちら

4月11日
アディスアベバに到着。チューリッヒからイスタンブール経由で、到着したのが深夜1時前。昨年もお世話になった友人たちに再会。まさか今年も戻って来られるとは思っていなかったから嬉しい。ボレ国際空港はエチオピアカラーにライトアップされていました。


そのまま午前中からアディスアベバ大学で1日目のプレゼンテーション。大学の教員、ゲストの建築家、学生など、今年も多くの人たちが見に来てくれました。前半はHousing、Upgrading、Mercatoの各プロジェクトの発表(詳しいプロジェクトの内容はこちら)。ランチを挟んで後半はCentral Park、Olympic、Tourismの発表。ちなみに川岸は今回エキシビジョンのためのビデオ撮影担当として来ているのでプロジェクトの発表はしていませんが、ティーチングチームとして各プロジェクトをサポートしています。


4月12日
2日目はCoffee、Energy、Agricultureの各プロジェクトの発表。今回も地元の建築家のほか、市の住宅開発部門の代表、開発区の都市計画家等を招いてのディスカッションは非常に熱い議論になりました。昨年よりもリサーチの密度、情報の信頼性が増し、各提案もより説得力を持っていたように感じました。これからデザインをするにあたって、各方面から厳しい意見やアドバイスをもらいました。


そのまま見学ツアーへ。街の中では至る所で建設中の建物が見られます。木材で組み立てられた足場やコンクリートの精度を見ると大丈夫なのか不安になるほどですが、これが今のアディスアベバの成長スピードを象徴しています。1年間に3万戸の住宅建設が政府から計画され、建設されています。


昨年9月のエチオピア・ミレニアム(エチオピア暦では現在が2000年です。)を記念して計画されているミレニアムパークの植樹に参加。世界各国から集まった建築学生グループが関心をもっているということで、後日新聞とテレビで報道されました。ミレニアムパークのデザインは今後コンペを実施して決定されるそうです。


市の中心にある10階建てのビルの屋上から見た夜景。夜景とは言っても派手にライトアップされているのは最高級のシェラトンホテルくらい。市の中心部でも電力不足で週に数回停電が起こるほどなので、夜景のために電力を使うほどではないことは理解できる。それにしても、建物の高さが低い。これから中心部の密度を上げるために中高層のビルを建設しはじめたら、都市景観も随分と変わるはずです。


4月13日
市内ツアー。まずは街の北に位置するエントト山の頂上にある、Entoto Mariam Churchを見学。敷地内に博物館があって、かつての王が城をエントトに構えたころからの歴史を学びました。


教会からアディスアベバの街を見下ろすことができます。


そのまま市内から30分ほど離れたSlulutaへ。少し街を出ただけで、一気に建物が減って、土壁の住宅と家畜の田舎の風景が見られるようになります。これがここに来る前に自分が持っていた「アフリカ」の印象。ちなみに、アディスからSlulutaへつながる道路は日本の援助によって建設され、Kajimaが施行したらしい。ということで、道路建設のために現場事務所がある村にはKajimaという名前がつけられていることを発見。最近は専ら中国からの投資が目立っているが、日本もちゃんと貢献していることを知りました。


東の住宅開発地区へ。去年は空き地だった場所が今では住宅建設がすごい勢いで進められている。農家が土地を失い、どんどん郊外へ追いやられています。道路上でロバや家畜に遭遇することも珍しくありません。


建設現場の様子。木組の足場が非常に印象的。鉄製の足場を生産して、使う予算がないのだとか。見た目はなかなかクールでもやはり強度が不安。


住宅開発地区の最東端。一気に大草原の雰囲気。すでにエチオピア航空の住宅地開発が計画されているらしい。都市の輪郭が急激に拡張されていることがわかります。


4月14日
午前中はスラム地区のUpgradingプロジェクトの見学。その前に、ロゴがスターバックスに非常に似ていることで有名なKALDI's Coffeeへ。車を泊めただけで店員が来てくれて、そこで注文できます。もはやドライブスルーどころではありません。エチオピアで車内空間の多目的化を実感しました。


昨年も訪れたSister Jemberが始めたIHA-UDPを見学(Websiteはこちら)。約10年をかけて、スラム地区の住宅を改善する事業を続けてきた団体(おそらくNGO)。住宅の改善だけでなく、教育施設、職業訓練プログラム、研究者育成のための大学も構え、総合的かつ継続的な活動を続けている。彼らがこれまでに達成した既存のコミュニティを保持しながらのスラム地区のUpgradingプロジェクトは素晴らしい成果を残しています。しかし近年、政府が都市中心部の高密度化を図るうえで、スラム地区を郊外へ置き換えようとする政策によって、もはやスラムをアップグレードする活動自体が許可されず、もはや現在のコミュニティの形態を維持すること自体が難しくなっています。都市が抱えているこのような問題に対して、彼らをはじめ多くの建築家、アーバンデザイナーたちが真っ向から立ち向かっています。


午後からは街を流れる川沿いの調査へ。川沿いはゴミ溜めとなっている空間ではありますが、所々に農業も見られ、今後改善されるべき、改善できる潜在性をもった空間と言えます。
(ゴミにまみれながらビデオを回す川岸。)


この風景だけ見ていると、とても400万人の都市の中心部とは思えません。この都市と農村のクオリティを共存させることができればおもしろい都市が誕生すると思うのですが。


4月15日
Energyグループに同行してSlaughterhouse(食肉センター?)へ。ここから排出される有機物エネルギーの再利用実態について調査するためです。実は初めてこういう空間に入りました。エチオピア正教の復活祭前の食物制限期間中だったため、残念ながら(幸いにも?)清掃期間中でしたが、すべてのプロセスとその空間を見学させてもらいました。


最後にたどり着いたのは川沿いに位置するBone Yard。文字どおり骨の廃棄場。廃棄場とはいっても、消却されているわけではなくて、そのまま自然に戻るのを待っている状態。周辺にはかなり生臭い匂いが漂っています。そのまま川の水を汚染しているので、近いうちに解決されるべき問題と言えます。ちなみに、この廃棄場はさきほどの農作地の川を挟んだ対岸に位置していて、ものすごいギャップです。


そのまま市のゴミが集められる廃棄場へ。ここがEnergyグループの提案の計画地。広大なゴミ山の空間を緑に覆われたバイオエネルギーの生産装置として提案しようとしています。


それにしても、このゴミ山のド迫力はすごい。残念ながら実際に中に入ることはできませんでしたが、ここでゴミを集めながら生活している人たちも存在しています。ここを緑の空間としていかにリアリティをもって提案できるかが勝負どころです。


午後からCentral Parkチームに同行。市の中心部に位置する広大な緑地、pikok parkへ。アディスにあるビール会社St. Georgeが所有しているらしい。10年以上前のオープン当初は10万人ほどの入場者を記録してましたが、現在は入場者数が減少しています。ただの公園ではなく、敷地内に農家のための住宅地と農作地を併設しています。


敷地内では都市の中心部とは思えない、緑豊かなクオリティをもった空間を見ることができます。しかし、すぐ周辺には中高層ビルも建ちはじめ、立地の良さと規模、現在の採算の不効率性からして、すぐにでも住宅開発またはリゾート開発が進められてもおかしくないと思われます。この成長する都市のなかでは、公共のための緑地を維持することも難しくなっています。


4月16日
Agricultureのグループに同行してBio Farmへ。家畜の排出物からガスを抽出するシステムをはじめ、コンポスト、いろんな形態の植栽など、いろんな技術を見学。


教育施設と大学も併設されていて、環境教育から最先端の研究まで包括的なプログラムを実践しています。こんな先進的な実例がエチオピアにあるとは・・・自分の無知さにショックを覚えます。


午後からUpgradingグループの調査へ。プロジェクトを提案する敷地を一通り歩き、ひとつの住居を見せてもらい、インタビューもしてみる。それほど貧しい人たちではないようでしたが、それでもやっぱり公営住宅を買うまでにはほど遠い。ちなみに、アディスアベバの世帯の50%が月収300ETB(約30USD)以下で、この収入では賃貸住宅に住むことはできないため、どうしてもコミュニティが提供する住居か、不法な住居に住むしかない状況にあります。


コミュニティのつながりも強く、多くの活動は外部の共用スペースで行われています。この地域は開発地区に指定されていて、彼らは数年後には立ち退きを強いられることにが決まっています。コミュニティがそのまま他の場所に移り住めるかどうかも疑わしいところです。Upgradingグループは開発と既存コミュニティを共存させるための方法論を提案しようとしています。


最後はマーケットグループに合流。現在は使われていない鉄道沿いのマーケットでインタビュー。多くの人で賑わっています。ビデオを撮影していると、必ず子どもたちが近寄ってきます。テレビか何かの撮影と勘違いしているらしい。まあ、もしかしたら使うことになるかもしれませんが、残念ながらほとんどゴミ箱行きです。。。


4月17日
昨年チューリッヒに客員教員としてきていたZegeyeの設計事務所で新しいプロジェクトを見せてもらう。それにしても、大きなプロジェクトばかりで驚きます。日本でこんなに大きいプロジェクトに取り組む機会はまずないと思われます。ふと、ここで働いてみたいと思う。

午後パノラマビデオ撮影のテスト。光の設定が難しいが、面白い画像になりそう。
深夜、グループが滞在を終えてスイスに向けて出発。川岸はあと1週間滞在したため、グループをお見送りしました。去年よりは一日増えたとは言え、非常にタイトなスケジュールでしたね。でも、なかなか良い調査ができたようなので、今後のプロジェクトに期待です。

Learning from Addis Website
http://www.angelil.arch.ethz.ch/mas/

投稿者: 日時: 00:51 |