Once in a lifetime experience of Architecture
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11th International Architectural Biennale Venice: Review
今回のヴェネチア・ビエンナーレの紹介と感想を少し。テーマが"out there: Architecture beyond building"ということで、これまでの建築という認識を覆すような建築の可能性を見せようとしている。
川岸の中ではパヴィリオン建築の中でNo.1のスカンジナビア・パヴィリオン。今回はこのパヴィリオンの設計者でもあるSverre Fehnの作品が紹介されていました。パヴィリオン自体も既存の樹木を残しながら、薄いコンクリートのリブを組み合わせて作られた屋根がかけられ、気持ちのよい空間ができ上がっている。
キプロス・パヴィリオン。ピーター・クックがキュレーターをつとめ、キプロスの若手建築家の作品が展示されていました。それにしても、キプロスは人口80万人ほどの国でありながら、出展者のほぼ全員が海外に出て経験を積んでいるというのはとてもおもしろい。
シンガポール・パヴィリオン。こちらも若手建築家およびデザイナーの作品を展示し、頭上のスピーカーからは彼らがそれぞれの作品についてディスカッションしている音声を流している。他分野のクリエイターたちがコラボレーションして、リンクしている状況が表現されていたように思う。
オランダ・パヴィリオン。今回のパヴィリオン自体はそれほど凝ったものではなかったけれど、オープニングの3日間、切れ間なくディスカッションとイベントを企画して、むしろその場を作ること自体に意義があるような印象を受けた。
チリ・パヴィリオン。若手建築家PEZO VON ELLRICHSHAUSEN ARCHITECTSがキュレーターをつとめ、ツーリズムとしてチリの有名な建築をミニチュア化して展示。建築とツーリズムのつながりを見せようとしている。
ベルギー・パヴィリオン。外部は仮設用の金属パネルで覆われ、外からは何も見えない。中にはいると紙吹雪のような色彩豊かな紙片が床に敷き詰められている。それこそタイトルはAfter the party。既存のパヴィリオンにとらわれず、新しいテリトリーの定義をデザインするという現代的な考え方を見せながら、1907年に建設されたパヴィリオンの、2007年に行われるはずだった100周年パーティーの後という、少し感傷的な表現もおもしろい。
ドイツ・パヴィリオン。リサイクルであったり、インタラクティブであったり、植物であったり、多様な空間をつくる可能性のあるオブジェクトを展示している。Instantによる"United Bottle"プロジェクトに注目。http://www.united-bottle.org/
中国パヴィリオン。四川大震災の後ということもあり、仮設建築の展示が目を引く。紙管を使った建築は坂茂氏のそれほどエレガントではなかったし、雨に濡れてやわらかくなっていたので壊れはしないかと少し不安に思う。
見事金獅子賞を受賞したポーランド・パヴィリオン。既存の空間の将来の可能性を少し皮肉まじりにコラージュしてみせている。
ここからがArsenaleで展示されている作品たち。Architecture Byond Buildingを建築家たちが表現している。 Asymptoteの作品。家具というかオブジェに近い。建築家がここまでやる時代ということでしょうか。
Zaha Hadid Architects 存在感はひたすらすごい。座りやすい高さに設計されているのにも関わらず、座れないとは、どういうことか。これもオブジェ系。
Guallart Architects, MIT CBA, IAACによるHyperhabitat。こちらはインタラクティブ系。ある家具のスイッチをいれると、どれくらいの影響があるのかを正面のスクリーンで表示している。詳細はこちらhttp://www.hyperhabitat.net
M-A-D / Erik Adigard and Chris Salterによる作品。これもインタラクティブ系。人がスクリーンの前を通るとセンサーが反応して、スクリーンに表示される。現実とバーチャルをつなぐツールということか。
Philippe Rahmの作品。本質は空気の循環をつくりだす装置によって人工的な自然を作り出しているということだと思われる。が、それよりも古代を思わせるような、布切れを身につけた、もしくは全裸に近い人たちが楽器を演奏するというパフォーマンスが訪れた人を釘付けに。画的に美しくはあるが、実際その装置がどういう空間を実現するのかを知りたかった。
Massimiliano & Doriana Fukusas作。巨大でマッシブなオブジェクトのなかにキッチンのムービーが映される。建築の巨大化をテーマにしているのか。
Greg Lynn Formによる作品。使われなくなった玩具を再利用した家具。やはり汎用性の高い新しい空間概念のアイデアということで評価されたのか、金獅子賞を受賞。
Diller & Scofidio + Renfroによる作品。ヴェネチアの運河を船に乗っている映像を見ているうちに、いつのまにかヴェネチアを模した場所、例えばラスヴェガス、マカオ、名古屋(どこ?)の映像に切り替わっていく。ブランディングが起こしている現象を表現している。
Atelier Bow-wow による作品。アトワンのモバイル作品の最新作。モバイル性を追求していくと建築の概念はどうなっていくのだろうか。
MACEによるEveryvilleプロジェクト。作品自体というよりは、情報を共有し、リンク付けするためのインタラクティブツールの展示というべきか。詳細はこちらhttp://www.everyville.labiennale.org/
Penezic & Rogina Architectsの作品。住空間の水回りユニットが、水の循環装置によって接続され、自然を感じるようなエコ空間を提案している。
最後はGustafson Guthrie Nicholによる"Towards Paradise"人工的な楽園を想像させる作品。農村への回帰を思わせる。
全体的に見て、建築の新しい形態への回答は、まずはWeb2.0のようなArchitecture2.0的概念として、ユーザーによって形態を変えていく空間装置。次に建築という職能を超えたオブジェクト的なデザイン領域への提案、そして自然という表現としての建築。このような提案が目立ったような気がする。キュレーターの考えは、建築がユニットとして汎用性、模倣性を持ったとき、新しい考えが生まれるのではないか、ということだったように思う。今回の展示でもそれぞれの建築家が、建築を概念的表現まで近づけていたという意味では、将来のアイデアがつまった建築展と言えるのかもしれない。何よりも有名建築家のみならず、多くの若手建築家がアイデアを競い合っていたのは非常に刺激的だった。
text by Noboru Kawagishi